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ダークソウル世界観考察

ソルロンドと竜血騎士団

 

『1』において地下墓地方面を担当する聖女レア御一行。聞くところによると、彼女たちは故国ソルロンドに伝わる「不死の使命」を帯びてはるばるロードランの地を訪れたのだといいます。不死の使命というとフラムトによるものと混同されてややこしいのですが、ソルロンドにはソルロンド独自の不死の使命があるらしく、その詳細はペトルスの口から語られます。

 

ソルロンドのペトルス (DS1)

聖職における不死の使命とは、まず「注ぎ火」の探索です
「注ぎ火」は、人間性により、不死の篝火を育てる業
それにより、我らは英雄の力を得るのです

まあ、でも、難しいですね。使命は秘匿されるべきですから…

 

彼らにとっての不死の使命とは、ずばり「注ぎ火」の探索です。なんでも注ぎ火は人間性により不死の篝火を育てる業らしく、それによって「英雄の力」得られるのだといいます。彼らの進路が地下墓地であることを踏まえると、これはおそらく三人羽織を倒すことで入手できる「注ぎ火の秘儀」のことを指していると考えられます。

 

注ぎ火の秘儀 (DS1)

注ぎ火にて、さらに大きく篝火を育て
より多くのエストを得るための秘儀
聖職の伝承に秘密として伝わるが
儀式自体はすべての不死人が行える

しかし人は、不死となりはじめて
人間性の「使い途」を得るものなのか

 

ソルロンドのレア (DS1)

でも、気をつけてください この先に、恐ろしい亡者が、2人います
どちらも優れた騎士で…私の、供だった者です
あの者たちが亡者となり、神に背くなど、酷いことですが…
私には…どうしても…どうすることもできないのです…

 

エストの効果を高める注ぎ火の秘儀は、言い換えれば生命力を増強する力です。聖職に広く普及する生命湧きの奇跡がおなじく戦士たちの生命力を増強するものであったこと、白教の聖騎士であるリロイが持つサンクトゥスに自然回復の祝福が施されていること、そもそも回復魔法と白教が密な関係にあることなど、諸々から推察するに、ソルロンドをはじめとする白教国家には生命力=健康的な肉体を保つことを良しとする価値観があるようで、それを極限まで高めた超人こそがペトルスの言う「英雄」のイメージなのだと考えられます。亡者になった従者二名を「神に背く」と嘆いたレアの台詞は、そんな価値観がソルロンドの宗教観と深く結び付いていることを表しています。歩く死体に等しい亡者になることは彼女にしてみれば神が与えてくれた肉体を汚す冒涜なのです。

 

ソルロンドのタリスマン (DS1)

神の奇跡をなす触媒
ソルロンドのそれは高位の聖職者にのみ与えられ

加護により信仰によらず高い威力修正を実現する

 

ペトルスは不死の使命を「秘匿されるべきもの」と口を滑らせていますが、そんな価値観を踏まえれば秘匿されなければならない理由が少し透けてみえます。彼らは神の教えのもと死を忌避しているにも関わらず、注ぎ火という死の力にあやかろうとしているという点で、禁忌に手を出している自覚があるのです。つまりソルロンド司祭らの信仰は言ってしまえば建前であり、それは彼らが用いるタリスマンが少ない信仰で効力を発揮できるように作られている点にも表れています。おそらくレアの敬虔さはソルロンドのなかではむしろ珍しく、だからこそペトルスは彼女を危険な巨人墓場に先行させて意図的に排除しようとしたのかもしれません。

 

さて、まとまりのないことを語ってきましたが、要はソルロンド(の司祭)は生命力ジャンキーであり、そのためなら信仰を蔑ろにしようと禁忌であろうと易々と手を出す生臭坊主の国だった、という文脈だけ押さえていただければ大丈夫です。本考察はこれを少し発展させてソルロンドのその後の歴史を想像したものになります。

 

眠り竜の褥

 

ソルロンドという国の名が『1』より後の作品に登場することはなく、特にカリムやアストラ、ヴィンハイム、大沼といった主要な地名をもれなく登場させた『3』においてもソルロンドだけは一切触れられることがありませんでした。ソルロンドはとうの昔に滅亡したと考えることもできますが、アストラが亡国になってなお名が伝わっていることを踏まえると、それは国名が登場しない理由にはならないようです。

 

この奇妙な空白を埋めるポテンシャルのある国として私が提示したいのが『2』に登場したリンデルトです。リンデルトはソルロンドと同様に、聖職による権威主義的な国家である反面、支配層の信仰が建前化しているという点で内部事情が似通っており、いわば『2』における“ソルロンド役”として演出されている感があります。もちろんそれだけだと単に似ている国として片付けられるのですが、リンデルトは“建国の歴史”という珍しい領域にプロットが割かれており、それがどうもソルロンドの歴史から枝分かれしているように思えるのです。

 

古竜院の長衣 (DS2)

秘儀を伝える古竜院の実態は知られておらず
それに近づこうとする者は皆人知れず姿を消す
古竜院にはリンデルトの建国の歴史が記録されており
それは秘匿されるべきものである

 

リンデルトの建国の歴史、それは聖職らが集う組織である古竜院によって秘匿されているといいます。しかしながら、人の口に戸は立てられぬようで、次のような伝承が半ば公に知られていました。

 

生命湧き (DS2)

中位の奇跡のひとつ、HPをゆっくりと回復する
リンデルトの聖騎士団は前線に立つ際にこの奇跡を用い不倒の戦いを見せる
騎士団にはかつて人々を脅かした毒竜を撃ち滅ぼしたという伝承がある

 

竜血の鎧 (DS2)

竜血騎士の漆黒の鎧、彼らの国の名は既に失われている
竜の血を信奉する竜血騎士団はヨアに率いられ聖壁に侵攻したが
眠り竜の目覚めとともに聖壁に沈んだ
漆黒の鎧を包み込む赤布は竜の血への憧憬を表している

 

毒竜を打ち倒した伝承。竜血騎士団こそ古竜院の母体となった団体であり、リンデルト建国の徒です。彼らは眠り竜シンの血を求めてサルヴァの聖壁に侵攻し、解き放たれたシンの毒によってサルヴァの都もろとも潰えたとされています。しかしながら、この侵攻によって後の古竜院が力をもったこと、誇張されているとはいえ毒竜を打ち倒したという伝承が今日に残っているということは、彼らのなかに逃げ延びて“何か”を持ち帰った者がいたことを意味しています。

 

聖院の護符 (DS2)

祝福が施された護符、使用者の毒を取り除きHPも回復する
奇跡を受け継ぐリンデルトの聖院では
古の力に倣ったこの手の護符が数多く作られている
所詮は模倣されたまがい物でしかないのだが
困窮にあってはそれは些細な問題にすぎない

 

竜の力の護符 (DS2)

祝福が施された護符、使用者の毒を取り除きHPも大きく回復する
竜の力の断片を宿すと言われ古来より伝わる数少ない真品
それが人の手によるのかは定かではないが

 

リンデルトが保有する技術の一端を示すものとして「聖院の護符」というアイテムがあります。これは使用者の毒を取り除きHPを回復させる品ですが、テキストによると紛い物であるらしく、リンデルトの聖院はこれを量産・流通させていたようです。そして護符には「竜の力の護符」と呼ばれる真品が存在しており、護符に宿った力が竜に由来するものであることが明らかにされています。聖院が紛い物とはいえ竜の力を模倣できている事実は、竜血騎士団が持ち帰ったものが単なるサルヴァの略奪品にとどまらなかった可能性を示唆しています。つまり、それが本当に竜の血だったのかは定かではありませんが、彼らが竜の力の一端を持ち帰ったことは確かなようなのです。

 

竜血の大剣 (DS2)

彼らにとって竜の生血は神聖さの象徴であり
血を得た者だけが生の真の理解に至りそれを超越すると信じられている

 

竜血騎士団は竜の血を得ることで生の真の理解に至りそれを超越できると考えていたといいます。「生の真の理解」というのはやや抽象的な表現ですが、竜の力に由来する護符の効果が治療と回復だったことを踏まえるならば、それは古竜の不死性を指していると考えてもあながち的外れではないはずです。そしてここにリンクしてくるのがソルロンドの「不死の使命」の文脈です。前述したように、ソルロンド司祭たちは生命力溢れる英雄になるための手段として注ぎ火を探していました。長い探求のなかで、彼らの関心が単に生命力を増強させることから不死性を得ることに変質していたとしたら、竜血騎士団はソルロンド司祭たちの、リンデルトはソルロンドの未来の姿だったとみることはできないでしょうか。

 

上位聖職の鎧 (DS1)
 *未使用アイテム

しぶとく倒れないことで有名な
白教の聖職の戦士が身につける鎧
その中でも特に黒色のものは
使命を帯びた戦士のものであり
高位の司祭であることも多い

 

薄っぺらいですが、ひとつ物証となるものもあります。竜血騎士の装いの特徴として漆黒を基調とする彼らの鎧がありますが、ソルロンドにおいて使命を帯びた高位の司祭がまとう鎧もまた黒色だったのです。これは『1』の作中では「上位聖職の~」という名前でデータ上に存在しており、ペトルスが身に付けている黒色の聖職シリーズと同一のものであることが分かっています。

 

以上です。後半に急ぎ足になってしまいましたが、書きたかったことは大体こんな感じだったと思います。竜血騎士団がソルロンドを母体とするという解釈が正しいとするならば、なぜ『3』においてソルロンドの痕跡がないのかという点に一定の説明がつくのではないでしょうか。彼らは目的を変え、国の在り方すらも変え、英雄の力ひいては不死性を求めて世界中を探索し、その一部は探索の果てにロスリックの古竜信仰と結び付いた、そう考えるとシリーズを通してドラマ性が生まれます。読んでいただきありがとうございました。